東京高等裁判所 昭和25年(行ナ)12号 判決
原告 千葉福之助
被告 特許庁長官
一、主 文
原告請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は特許廳昭和二十四年抗告審判第二七一号商標登録願拒絶査定不服抗告審判事件について昭和二十五年五月十日なした審決はこれを取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として、原告は昭和二十三年十月九日特許廳に「PTA」を横書してない第四十三類キヤンデー、ドロツプス、キヤラメル、ビーンズ、チヨコレートケーキ、チユーインガムその他本類に属する商品一切を指定商品とする商標(以下本願商標という)につき登録出願をなしたところ、特許廳は昭和二十四年七月六日右商標は「Parents and Teachers Association」の略称である「PTA」の文字をあらはしておるものであるが、これをその指定する商品について使用するにおいてはあたかも該機関で取り扱い販賣しまたは説明する商品であるかの如く商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるから本願商標は商標法第二條第一項第十一号の規定によつて登録できないものと認めるとの理由で拒絶査定を受けた。よつて原告は昭和二十四年八月十五日特許廳に抗告審判の請求をなしたが同廳は昭和二十五年五月十日右と同一の理由で右抗告審判請求は成立たゝないとの審決をなし、同審決は同年五月二十三日原告に送達された。しかしながら「PTA」は「父兄会」「保護者会」等というと同じく社会生活上の或る団体または階級を総称する普通名称であつて特定人格を指示する固有名称ではないから單に「PTA」というだけではその人格の特定を見ることはない。商品の混同とは特定者が或る商品に使用する標章と他人が同一または類似商品に使用する同一または類似標章とが市場において区別が困難になつた場合の現象を指すものであるから人格が特定しない場合には商品の出所混同を生ずることはあり得ない。また元來「PTA」なる団体は商品の取扱選択等に関與することを許されないことは「PTA」に関する指令に「本会は非営利的、非宗派的、非政党的であつて本会の名においていかなる営利的企業を支持することもまた他のいかなる営利的企業を支持することもまた他のいかなる職務(公私を問はず)の候補者を推薦することもできない。本会及び本会の役員はその名において営利的、宗派的、政党的その他本会の本來の事業以外の活動を目的とする団体及びその事業のいかなる関係をも持つてはならない云々」とあるによつても明であるから「PTA」の標章ある商品を「PTA」の取扱に係る商品と思う者があればそれは無知から生ずる誤解というの外なくこれを懸念して商品の混同を予測することは許されない。いづれにしても本願商標を以て商品の誤認または混同を生ぜしめる慮あるものとして右商標の登録出願拒否の査定を支持した原審決は不当であるからこれが取消を求めると述べた。
被告訴訟代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、原告の事実中、原告がその主張の日に特許廳にその主張の内容を有する商標に登録出願をなしたが同廳において原告主張の理由で拒絶の査定をなし、原告が更にその主張の日特許廳に拒絶査定不服抗告審判を請求したが同廳において右と同一の理由で請求は成立たない旨の審決をなしたことはこれを認める、その余の事実は否認すると答弁した。
三、理 由
原告が特許廳に対しその主張の如き内容を有する商標の登録出願をなしたがその主張の理由で拒絶され、更に同廳に拒絶査定不服抗告審判の請求をなしたが同一の理由で排斥されたことは当事者間に爭がない。よつて原告の登録出願に係る商標が商品の誤認または混同を生ぜしめる虞があるか否かについて案ずるに、元來「Parents and Teachers association」が学童の福祉の助長援助を目的とする非営利的、非宗派的、非政党的な団体であり、「PTA」は右団体の略称として使用せられておること、或る特定の学校に関係しているこの団体も一般にこの種の団体の事業目的が重視される結果特定の学校名を附することなく單に「PTA」の称呼で表示されることが多いのが実情であること、しかもこの団体が学童の学用品等の給與に関與する場合があることはいずれも顕著な事実であり、また本願商標の指定商品が学童向きであることは実驗則上明なところである。從つてこのような商品に本願商標が使用されるならば一般にその商品が右団体の取扱いに係るものと思はしめるに至ることは容易に予想することができるから結局商品の混同を招く虞があるものというべく從つて本願商標の登録出願は商標法第二條第一項第十一号により許すべからざるものといわなければならない。しからば本願商標の登録出願を拒否した査定を支持しその査定に対する抗告審判請求を排斥した原審決は相当であつて右審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がない。
よつて民事訴訟法第八十九條を適用し主文のとおり判決をする。